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DNAの折り畳み

−その物理化学と生物・医学への展開−
本書の特色
●近年、生物・物理・化学の各分野から注目されている「単分子観察」に基づく実験技術に関して、第1章では特に巨大DNAの単一分子観察実験を取り上げ、その技術の基礎原理と応用の実際を具体的に解説する。DNAの単一分子を観察することで得られる情報とその重要性の紹介は、単分子観察を扱った類書で未だ総説されたことのない内容である。

●遺伝情報の発見・複製等のDNAの機能は、DNAの高次構造に依存した調節をを受けることが古くから気づかれているが、その正確な描像は未だ不明である。このため、DNA単一分子の高次構造変化の詳細を明らかにすることが、細胞生物学・分子生物学・遺伝子工学等の分野では重要な課題となっている。第2〜4章では、DNA分子の種々の分子との相互作用によって起こるDNA分子の高次構造変化のメカニズムについて詳細に解説する。

●折り畳まれた巨大DNA分子は直径数10nm・サブミクロン程度の微粒子になる。微粒子は工学的にも重要な対象であり、特にDNAの微粒子化は新しい応用研究の可能性を持っている。本書では、微粒子・コロイド粒子としての折り畳みDNAにも着目し、その帯電特性(第5章)や具体的な利用応用方法(第2章)の解説を行う。

●DNAの折り畳み現象について本書で解説する理論は、本来高分子鎖に一般的にあてはまる内容でもある。第6章では一般の合成高分子の高次構造化も想定した折り畳み移転の理論も解説する。高分子が折り畳まれてできるかたちの多様性を示し、折り畳み構造の制御要因を指摘する。

●第7,8章では実際の工学・医学的応用として、細胞への遺伝子導入の問題を取り上げる。遺伝子導入では一般に、導入する遺伝子を含むDNA分子を凝集したり、微粒子化する技術が必要不可欠とされる。本書全体で明らかにするDNAの折り畳み・凝集現象の物理化学的理解に基づいて、適切な遺伝子導入キャリアを設計するための基礎的指針や課題を解説する。
監 修

執筆者
吉川 研一

吉川 研一 京都大学大学院理学研究科 教授
山崎 裕一 科学技術振興事業団 理化学研究所 超分子科学研究室
水野  彰 豊橋技術科学大学 エコロジー工学系 教授
松澤有希子 豊橋技術科学大学 エコロジー工学系 助手
木戸秋 悟 九州大学大学院 医学研究院 医用工学分野 助教授
高木 清二 Institut Non Lineaire de Nice FRANCE
野口 博司 岡崎国立共同研究機構 分子科学研究所 理論研究系
小山 義之 大妻女子大学 家政学部 教授
恵美 宣彦 名古屋大学大学院 医学研究科 病態内科学講座
安部 明弘 名古屋大学大学院 医学研究科 病態内科学講座
対 象 @生物:遺伝子工学、分子生物学、生化学
A物理:高分子物理、高分子溶液論
B化学:高分子化学、核酸化学その他単一分子解析の科学
の各分野がご専門の大学・民間企業等の基礎・応用両研究者
体裁/価格 体 裁:B5版  190ページ
定 価:本体21,000円+税
発刊日:2002年12月20日
発 行:アイピーシー出版部
コードNo. 931
発刊に際して
細胞の中のせまい空間につめこまれたDNAは、とても長い。全てを伸ばしてつなげれば数センチにもなる。そんなに長いDNAはいったいどのようなメカニズムで、細胞核の数ミクロンの空間に納められているのか。この生物学上の古くからの問題「DNAパッキング」は、物理学的には実にチャレンジングなテーマでもある。高分子鎖一本の折り畳みの物理、相転移論、イオン溶液論、メゾスコピック系の統計力学、コロイドの物理化学等々、すべてが関係する。本書は、DNAパッキングをこれら物理学の観点から捉えなおした新しいスタイルの解説書である。と同時に、それらの原理的理解を基に、DNAのみならず、電解質高分子鎖一般の高次構造を制御するための方法を考察した実践的な書でもある。高分子物理や遺伝子工学、単一分子解析の科学をはじめとする広範囲の分野の研究者に読んでいただきたい。各分野で扱っている系を捉えなおす新しい視点の発見が必ずあるはずである。
目次
序 章
1. 生物のDNAは長い
2. DNAの不思議
3. DNA折り畳みのスイッチング
第1章  DNAのビデオマイクロスコピー
1.1 光学顕微鏡とビデオカメラを接続させることで何ができるか
1.2 ビデオマイクロスコピーの装置構成
1.3 DNAをビデオマイクロスコピーで観察する
1.4 DNAの高次構造変化とは
1.5 DNAビデオマイクロスコピーの拡がり
第2章 水溶性高分子溶液中のDNA
2.1 PEG水溶液中のDNA
2.2 体積変化
2.3 コイル−グロビュール間の構造変化(核形成を中心に)
2.4 PEGによるDNAの折り畳みの理論
 2.4.1 なぜ、折り畳まれるか?
 2.4.2 凝縮の不利要因に拮抗する駆動力:排除体積効果の異なる高分子鎖の相溶性
 2.4.3 定量的扱い 
2.5 グロビュール化DNAの利用・応用(レーザートラップを中心に)
 2.5.1 レーザートラップの原理
第3章 DNAとカチオンの相互作用?:高分子電解質鎖の折り畳み転移の理論
3.1 鎖状高分子鎖の熱力学的性質
 3.1.1 理想鎖の性質
 3.1.2 高分子鎖のエントロピー弾性
3.2 高分子電解質−静電相互作用とイオン凝縮
 3.2.1 対イオン凝縮−棒状高分子電解質
 3.2.2 対イオン凝縮−セミフレキシブル鎖
3.3 高分子電解質鎖の折り畳み転移
 3.3.1 DNAセグメント間の相互作用
 3.3.2 多価カチオン添加による高分子電解質鎖の折り畳み転移
第4章 DNAとカチオンの相互作用?:巨大DNAのコンフォメーションアッセイによる解析
4.1 巨大DNAのコンフォメーションアッセイとは
4.2 ポリカチオンとの相互作用
 4.2.1 連続的折り畳み転移の実際
 4.2.2 中間状態の構造
 4.2.3 連続的となる原因
4.3 リガンド結合特性の影響
 4.3.1 低分子多価カチオン
 4.3.2 ポリカチオン
4.4 複数成分混合系
 4.4.1 塩イオン-ポリカチオン共存系:混合順位・ヒステリシス効果
 4.4.2 ポリカチオン/中性ポリマー/ポリアニオン混合系:クラウディング効果
第5章 DNAの高次構造変化と電荷中和
5.1 二変数対イオン凝縮理論について
5.2 電気営動の実験結果からわかる完全電荷中和
第6章 高分子鎖の折り畳みのシミュレーション
6.1 高分子鎖の模型とシミュレーション手法
6.2 柔らかい高分子鎖の折り畳み
 6.2.1 平衡状態
 6.2.2 折り畳みのダイナミクス
6.3 硬い高分子鎖の折り畳み
 6.3.1 平衡状態
 6.3.2 折り畳みのダイナミクス
 6.3.3 高分子鎖の形態の硬さ依存性
第7章 遺伝子治療におけるDNAの折り畳み構造の制御
7.1 非ウイルス・ベクターによる遺伝子治療
7.2 DNAの非ウイルス・ベクターによる折り畳み
 7.2.1 DNA分子サイズ縮小
 7.2.2 分解酵素からの保護
 7.2.3 ポリカチオンベクター
7.3 DNA/ポリカチオンの混合比と複合体形成
 7.3.1 アミン側鎖を持つPEG誘導体(PEG-A)による遺伝子導入
   (1)DNA分子のPEG-Aによる凝縮
   (2)Chol-PEG-Aの高いDNA凝縮力
   (3)グロビュール形成と遺伝子発現の相関
7.4 DNA/ポリカチオンコンプレックスのζ電位
 7.4.1 グロビュール表面電位と遺伝子発現
 7.4.2 ζ電位がプラスであることの意義
7.5 コンプレックスのほどよい安定性
7.6 コンプレックスがプラスチャージであることの悪影響
 7.6.1 疎水性アニオン分子によるコンプレックスの保護コート
 7.6.2 歩リアにオンによるコンプレックスの保護コート
   (1)三元ポリイオンコンプレックス
   (2)PEG-Cによる保護コート
 7.6.3 PEG-Cコートによる遺伝子発現の向上
 7.6.4 PEG-Cによる発現向上のメカニズム
   (1)弱酸性下でのりん脂質二重膜の破壊
   (2)プロトン・スポンジ効果
 7.6.5 プラスミド/ポリカチオン/ポリアニオン三元コンプレックスの解析
7.7 糖鎖PEG-Cコートによる細胞選択的遺伝子導入
 7.7.1 リガンド導入による細胞への効率良い遺伝子デリバリー
 7.7.2 糖鎖PEG-C/キトサン系によるメラノーマ細胞への遺伝子導入
7.8 全身投与への道
第8章 ウイルスベクターの構造と遺伝子導入の応用

8.1 ウイルスベクターにおけるゲノムとタンパク構造
8.2 各種ウイルスベクターと遺伝子導入系
 8.2.1 レトロウイルスベクター
   (1)レトロウイルスの構造
   (2)レトロウイルスベクターシステム
   (3)レトロウイルスベクター系の応用
 8.2.2 アデノウイルスベクター
   (1)アデノウイル

スの構造
   (2)アデノウイルスベクターシステム
   (3)アデノウイルスベクターの応用
 8.2.3 レンチウイルスの構造とベクターシステム
   (1)レンチウイルスの構造
   (2)レンチウイルスベクターシステムとその応用
 8.2.4 アデノ随伴ウイルスベクター
   (1)アデノ随伴ウイルスの構造
   (2)アデノ随伴ウイルスベクターシステムとその応用
 8.2.5 その他のウイルスベクター
   (1)ヘルペスウイルスベクター
   (2)センダイウイルスベクター
8.3 ウイルスの持つ特性を利用したベクター
 8.3.1 EBエピゾマール・ベクター
 8.3.2 アルファウイルスベクター
8.4 ハイブリッドベクター

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