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21世紀に向けての利用技術
漆化学の進歩
―バイオポリマー漆の魅力―
再生可能な植物資源としての利用研究が年々活発化してきた漆材料
本書の特色
  1. 化石資源に依存しない栽培型漆資源の利用は、 省エネルギー、 二酸化炭素の削減など環境問題と関連する優れた材料として見直されている。
  2. 漆は天然物で複合材料であるから高分子化学のみならず天然物化学、 酵素化学、 材料化学から生化学と医化学、 更に美術史に至るまで関係する研究分野は極めて広範囲である。
  3. バイオテクノロジーを利用した高分子合成の一環としてin vitroで酵素を利用したもの作り(ポリマー)の新しい手段も研究の対象になっています。
  4. 漆の組成や成分に関する精密化学的研究が進むにつれ、 自然界における生態の見事な仕組みに改めて驚嘆せざるを得ません。
編・著者 宮腰 哲雄(明治大学理工学部教授)
永瀬 喜助(福島県技術アドバイザー)
吉田 孝(北海道大学大学院理学研究科助教授)
執筆者 須藤 靖典(福島県ハイテクプラザ) 神谷 幸男(明治大学理工学部)
杜 予民(中国・武漢大学環境資源研究所) 室田 明彦(明治大学理工学部)
新村 典康(日本電子(株)応用分析センター) 石井 幹太(明治大学理工学部)
河合 敬一(河合医院皮膚科専門医) 佐野 千絵(東京国立文化財研究所)
体裁/価格 B5判 350ページ 上製本
定価/本体39,000円+税
発行日/2000年5月30日
コードNo. 796
発刊にあたり
漆の化学は、 漆液という物質の性質を究明する学問である。 つまり、 漆科植物がつくる樹液の構成成分を分離することによって、 各成分の化学構造やそれぞれの役割、 植物生理の仕組みを知ることができるからである。 また、 炭素結合がつくる有機化合物の新しい発見は今後も無限に続くと思われるが、 ウルシオールの酵素酸化による炭素、 炭素結合の生成についても更に見直すべき価値を感じる。 何故ならばウルシオールが、 酵素酸化によって重合体へ移行する過程で多糖類を拡散させ、 糖蛋白との会合体をつくって巨大分子になる仕組みになっていることなども含めて、 高分子合成や有機合成の分野でも学ぶべきことが多いからである。
 本書はこのような背景の中で、 天然高分子として知られる漆液に関する化学の進歩と、 それに伴う利用技術について解説したものであり、 安全性、 健康性、 快適性などが求められる現代社会の再生可能な植物資源として漆液をとらえ、 酵素重合型高分子化合物というユニークな材料に関する化学の基礎から応用までの幅広い領域に亘って纏めたものである。 執筆は、 天然高分子の利用研究に従事しながら関連技術を開発されてきた第一線の方々によるものであるから、 最新の研究内容をもっているものと確信し、 21世紀に向かっての課題となる天然物の利用技術を、 より一層発展させるために役立つことを期待するものである。  (宮腰哲雄)
目次
【第1章】漆塗料の特性と利用の実態
 1.1 漆液の精製
  1) ホモジナイズ分散法
  2) ワイパー摺摩式薄膜蒸留法
  3) 生漆の脱水処理後に行なう機械分散法
  4) 生漆をセラミックロールにかけ、 混練分散しながら脱水する連続精製法
 1.2 漆液の塗装
  1) 素地 (木地・生地)
  2) 漆工の用具
  3) 下地
  4) 下塗
  5) 研磨      
  6) 中塗
  7) 上塗り 
  8) 変塗り
  9) 加飾
 1.3 漆液の乾燥
  1) 常温加湿乾燥
  2) 高温焼付乾燥
 1.4 漆塗料の伝統的利用
  1) 古代 (紀元前)
  2) 飛鳥、 奈良、 平安時代 (〜1191年)
  3) 鎌倉、 室町、 桃山時代 (1192〜1602年)
  4) 江戸時代 (1603〜1867年)
  5) 明治、 大正、 昭和時代 (1868〜1988年)
  6) 現代
 1.5 漆塗料の工業的利用
  1) 過去
  2) 現代
【第2章】漆液の成分と組成
 2.1 漆液の種類と性質
  1) 日本の漆液生産地
  2) 中国の漆液生産地
  3) ベトナムの漆液生産地
  4) タイ、 ミャンマー、 カンボジアの漆樹と漆液
 2.2 ウルシオール
  1) ウルシオール成分研究の歴史
  2) ウルシオール成分の構造・組成
 2.3 漆多糖類
  1) 漆多糖類の精製
  2) 漆多糖類の成分研究
  3) メチル化分析法による中国産漆多糖の構造解析
  4) 中国産漆多糖のNMRスペクトルの帰属
  5) 漆多糖の溶液中での性質
  6) 漆多糖の樹液中での役割
 2.4 ラッカーゼ
  1) 漆のラッカーゼ酵素の由来と研究経過
  2) 漆ラッカーゼ酵素の分離と精製
  3) 分離精製方法
  4) 酵素の純度検定
  5) 漆ラッカーゼ酵素の分離精製と実例
  6) 漆酵素の化学組成と分子構造
  7) 漆ラッカーゼ酵素と真菌ラッカーゼ酵素
  8) 酵素触媒反応の測定法
 2.5 含窒素物 (糖タンパク)
 2.6 漆の香気成分
  1) 香気成分と分析法
  2) 漆液中の香気成分
【第3章】漆塗膜のキャラクタリゼーション
 3.1 漆塗膜の特性と評価
  1) 漆塗膜の粒子構造
  2) 漆塗膜の表面構造
  3) 漆塗膜の一般的性状
  4) 漆塗膜の経時硬度変化
  5) 漆塗膜の動的粘弾性
  6) 漆塗膜の耐侯性
 3.2 漆膜のX線光電子分光法による表面分析
  1) X線光電子分光法について
  2) 天然漆膜表面の耐久性構造の解明
  3) 天然漆膜の硬化と表面構造の変化
  4) 合成漆膜の分析
 3.3 漆膜の熱分解-GC/MSによる分析
  1) 熱分解-GC/MS法について
  2) 天然漆膜の構造分析
  3) 合成漆膜の構造分析
 3.4 漆の化学発光
  1) 化学発光と応用
  2) 化学発光の発現機構
  3) 化学発光の測定と化学発光分析の特徴
  4) 化学発光分析装置
  5) 化学発光の解析法
  6) 化学発光の漆分析への応用
  7) 化学発光の漆分析での役割
【第4章】漆の化学的な合成
 4.1 ウルシオールの合成
  1) 飽和ウルシオールの合成
  2) モノエンウルシオールの合成
  3) ジエンウルシオールの合成
  4) トリエンウルシオール類の合成
 4.2 酵素重合型合成漆の研究
  1) アルケニルカテコール類の合成
  2) 3-アルケニルカテコールの合成
  3) 4-アルケニルカテコールの合成
  4) 側鎖にエステル結合を有するウルシオール類似体の合成
【第5章】漆液成分の応用と関連研究
 5.1 漆液成分の生理活性
  1) 白血球増殖作用
  2) 血液凝固促進作用
  3) 抗腫瘍活性
  4) 抗HIV作用
  5) 抗凝血作用
 5.2 漆かぶれの発症と予防
  1) うるしかぶれとは
  2) 漆かぶれの発症機序
  3) 漆職人における漆かぶれ―かぶれの耐性・慣れ (hypo sensitization)
  4) 漆かぶれの予防策―トレランスの誘導
 5.3 漆酵素の構造と性質
  1) 漆酵素の銅の状態
  2) 含銅酸化酵素の種類
  3) 青色の銅酸化酵素中の銅イオンの状態と触媒能力
  4) 第1類(タイプI)銅イオン、 青色銅
  5) 第2類(タイプII)銅イオン、 非青色銅
  6) 第3類(タイプIII)銅イオン、 ESRで測定できない銅
  7) 酵素分子中の3種類のCu2+イオンの構造
  8) 各種類のCu(II)による触媒反応中の協同作用
 5.4 真菌ラッカーゼの生産と性質
  1) 担子菌ラッカーゼ(Basidio-Laccase)の生産
  2) 担子菌ラッカーゼの特徴
  3) Coriolus Consors 真菌が産生するラッカーゼ
  4) Coriolus Consors 真菌が産生するラッカーゼの特徴
  5) ラッカーゼのイソエンザイム(isoenzyme)
  6) 生理機能
  7) 固定化漆酵素及び化学修飾酵素
  8) 固定化酵素の性質
  9) 酵素触媒反応中における固定化の影響
  10) 真菌ラッカーゼの固定化
  11) 漆ラッカーゼ酵素の固定化
  12) 化学修飾酵素
  13) 金属イオン置換
  14) アミノ酸置換
  15) 側鎖の修飾
  16) 高分子の結合による修飾
  17) 蛋白鎖の加水分解
 5.5 漆ラッカーゼ酵素を用いた酸化反応と応用
  1) 漆ラッカーゼ触媒による酸化反応と応用
  2) 漆酵素に対する添加物の影響
  3) 漆酵素の応用
  4) 逆ミセル中での漆ラッカーゼ触媒性能
 5.6 ラッカーゼ酵素を用いたフェノール類の重合
  1) ラッカーゼ酵素について
  2) イソオイゲノール及びコニフェリルアルコールのラッカーゼ酵素による重合
 5.7 漆の文化財に関する科学的研究
  1) 基準試料の分析
  2) 建造物試料 上野寛永寺清水堂在来仕様調査―経年劣化試料の分析
  3) 塗膜に使用した樹液の樹種推定―ベトナム、 タイ、 ミャンマー、 中国、 日本
 5.8 歴史的な漆工芸品の分析
  1) 分析方法について
  2) 分析結果について
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